Takahiro Tsuji

分析から新たな医療課題を探し出す
データエンジニアリングが描く予防医療の未来

―辻さんのバックグラウンドと、キャンサースキャンとの出会いを教えてください。

新卒で建築設計事務所に勤務し、その後、保健医療分野のコンサルタントとしてイラク・アブダビ・ベトナムなどの新興国で病院整備や技術移転事業に携わりました。
アブダビのプロジェクトで、日本から予防医療の技術を持っていくことになった際に、プロジェクトを一緒に進めていた国立がん研究センターの先生がキャンサースキャンを紹介してくれました。そのとき初めてキャンサースキャンの事業を知り、そのなかで、公衆衛生・疫学というアプローチの重要性を感じるようになり、この分野で自分のキャリアを広げていきたいと考え、入社を決めました。

―キャンサースキャンでのキャリアの変遷を教えてください。

私は2016年よりキャンサースキャンに参画しました。入社当時は社員も10数人で、今のように会社の機能が分化していませんでした。そのため、営業から分析・資材作成・発送にいたるまで1人で全て行うというスタイルで仕事をしていました。
そのころはデータ分析をExcelで行っていましたが、効率化のためにプログラムを書いていたことが周りの人の目に留まったのがきっかけで、データを取り扱うチームを派遣社員の方2人と一緒に立ち上げました。それが今のデータエンジニアリング本部のもとになっています。その後組織も大きくなり、20人ほどまでメンバーも増えました。
現在はデータエンジニアリング本部の部門長として、開発・分析・公衆衛生の三つの領域を担当しています。

―データエンジニアリング本部の役割を教えてください。

私たちが手がけるサービスは全てデータを活用しているので、データエンジニアリング本部の役割は多岐にわたります。具体的には、ショートメール(SMS)を使って行動変容を促すメッセージを配信したり、ご依頼をいただいたお客さまの地域がどんな医療課題を抱えているのかを分析で導き出したりしています。また、事業開発本部や他部門と共同で新規事業の開発も進めているほか、大学の先生方と共同で実証事業を行うなど、科学的エビデンスに基づいたサービスに繋げられるように取り組んでいます。

―データエンジニアリング本部の部門長としてやりがいを感じていることや、成長を感じていることはありますか?

データを取り扱うチームを立ち上げた際、初めてマネジメントというものを経験したのですが、今でもマネジメントは試行錯誤の連続です。組織づくりや採用・評価など、自分で考えたことを施策に落とし込んでいく際に失敗することも多いぶん、やりがいもあり、成長できる環境にいると感じます。

―辻さんは現在データエンジニアリング本部長を務めるかたわら、ロンドン大学衛生熱帯医学校に在籍されていますが、なぜ進学を決意されたのですか?

データエンジニアリング本部ではデータの分析を行います。そのなかで、「分析の結果をどう解釈してお客さまにどう伝えるか」という点において、公衆衛生や疫学の知識はなくてはならないものです。
データの処理や計算は、スキルを身に付ければ誰でもできることです。ただし、その結果から何が言えて何が言えないのか、批判的に吟味し正しく解釈することは難しい。だからこそ価値があるものだと考えています。こうした理由から、会社の理解もあり、通信制という形でロンドン大学衛生熱帯医学校にて疫学を学ぶことになりました。

よりよい組織と社会づくりを目指して
自ら学び、発信し続けるチームに

―データエンジニアリング本部がこれからチャレンジしようと思っていることは何ですか?

データエンジニアリング本部はいろいろなパートに分かれており、それぞれに目標があります。そのなかでも目下の目標としては、エンジニアチームの組織づくりと、アナリティクスチーム・パブリックヘルスチームによる社外への情報発信が挙げられます。
エンジニアチームは、個々の活躍からチームでの活躍をテーマに、より強固な組織づくりを進めていきます。開発者体験(Developer Experience)の向上により一層取り組み、会社や組織の成長とエンジニアのやりがいを両立することで、既存事業はもちろん、新規事業の創出もエンジニアリングの力で支えていきたいと思っています。
アナリティクスチーム・パブリックヘルスチームでは、蓄積した知見やノウハウを、外に向けて発信していきたいと思っています。事業の実施数も多くなり、全国47都道府県で事業を展開するまでに成長するとともに、地域ごとの特徴や、どのような因子が行動の変化に影響するのかなど、分かってきたことがたくさんあります。これまで私たちは、目の前にある事業やお客さまの抱える医療課題の解決のみに注力してきましたが、同じような課題に取り組んでいる現場の担当者は日本中にいらっしゃいます。たとえ私たちと一緒に事業を実施していない人や組織だとしても、困っている誰かの参考になるのであれば、私たちの知見やノウハウを、行動変容を引き起こすための参考事例や科学的に検証したエビデンスとしてお届けしたいと考えています。
また、公衆衛生の施策には、すでに自治体で取り組まれているもの以外にも、これから取り組むべき重要な課題がたくさんあります。そうした課題を、私たちが探し出し、精査し、エビデンスとして、世の中に提示していく。それがお客さまだけでなく、いろいろなところでの判断材料となっていく、そんな道を切り開いていく存在になりたいと思っています。
また、特に今注目されている疫学分野において、プロジェクトをリードできるようなチーム、組織にしていくのが理想です。そのために、外部の専門家の方々にご協力いただきながら、定期的にレベルアップを図っています。

―どんな人がデータエンジニアリング本部に向いていますか?

学習意欲が高い人が向いています。技術や分析の手法などは日々進化し続けるものですし、ヘルスケアという分野は領域が広く、常に学びが必要な環境です。
組織としては成長中であり、自分の領域に留まらず、異なる領域の仕事に触れることもあるのですが、それをチャンスと捉えられる人もデータエンジニアリング本部に向いています。そのように考えられる人は成長も早いですし、より多くの活躍の機会を持てるはずです。
また、技術・専門領域に踏み込むとどうしても理想を追い求めてしまいますが、私たちは現実の課題に向き合っているので、理想と現実のバランスがとれた最善のアプローチを提案し、実現できる人が活躍できる環境にあると思います。

齋藤 拓実データエンジニアリング本部 アナリティクスチーム アナリスト 医師