Cancerscan Way

行動変容の力で日本を健康にする

私たちキャンサースキャンは、日本の予防医療が抱える課題を「行動変容にまつわるフリクションの問題」と捉え、行動変容をつくり出す技術を武器にその解決に取り組んでいます。

具体的には、住民の定期健康診断・がん検診の受診率向上、各種生活習慣病の治療率向上など、全国の市区町村が実施する予防医療事業の戦略立案・実行支援を行うことが私たちのビジネスの中心です。ベンチャー企業が地方自治体をクライアントにしたビジネスに挑戦することにはさまざまなリスクが伴いますが、キャンサースキャンは強い想いと意図をもってこのビジネスに挑み、確かな成果を上げはじめています。

日本の市区町村は、国民健康保険(国保)と後期高齢者医療制度*の加入者を中心とした住民の健康づくりに大きな責任を負っています。その大半が65歳以上である彼らは、年齢による健康状態の悪化に加え、40・50代以前の不摂生の蓄積が見られるケースが多く、その健康状態を維持・改善することは並大抵のことではありません。しかし、65歳以上の国民が国民医療費全体の6割を利用する今、市区町村が実施する予防医療事業の効果は、日本の医療制度を守れるかどうかの重要な分水嶺になっています。
*75歳以上の国民のための健康保険

キャンサースキャンは、そんな日本の予防医療の最前線を守る市区町村の予防医療事業担当者の皆さまに、行動科学やコミュニケーション、医学や疫学、そしてデータ分析やデジタル技術に関する高い専門性を提供することを通じて、日本の予防医療推進に必要不可欠なインフラストラクチャーになりたいと考えています。

行動変容のつくり方

例えば、キャンサースキャンが全国の4割以上の市区町村を支援している定期健康診断の受診率向上事業では、全国の市区町村が自前で事業を実施した場合と比べて、私たちの事業は平均10倍以上*の受診率向上効果を上げています。こうしたキャンサースキャンの高度な行動変容技術を支えているのは、マーケティング、データサイエンス、そして科学のエビデンスです。
*弊社独自データによる集計

1. 最強のコミュニケーション媒体:自治体通知

一般的に、媒体選択はマーケティングの下流工程として扱われます。しかしここではあえて、キャンサースキャンのマーケティングの大きな特徴であるコミュニケーション媒体の選択戦略を起点として、私たちのマーケティングをご説明したいと思います。

市区町村の予防医療事業支援の中で、その効果を最も大きく左右する重要な要素は、住民に行動変容を促すためのコミュニケーションです。そのコミュニケーションを伝える媒体としてキャンサースキャンが最も頻繁に活用するのは、市区町村が住民に郵送する紙のダイレクトメール(自治体通知)です。「えっ、令和なのにダイレクトメール…!?」と思われるかもしれません。

しかし、実は自治体通知はマーケターにとって理想的なコミュニケーション媒体のひとつと言えます。それは日本の市区町村が非常に高い精度で住民情報を管理しているため、ターゲットした住民一人一人にほぼ100%の確率でピンポイントにコミュニケーションを届けることができ、またきわめて高い網羅性を持っているからです。また、40歳以上の住民はその8割以上が自治体からの郵便物の中身をしっかりと確認すると答えた調査もあるくらい、その内容はかなりの高確率で対象者の目に留まります。見込み客全員の自宅に確実にメッセージが届き、しかも内容をしっかりと確認してもらえるようなコミュニケーション媒体は、まさに理想の媒体です。

市区町村担当者もその実力と可能性の大きさに気付いていないことの多い自治体通知ですが、プロのマーケターがメッセージやデザインを巧みに作り込み、データ解析の結果と組み合わせたプランニングを行うことで最強のコミュニケーション媒体に生まれ変わります。

キャンサースキャンでは、自治体通知を各種デジタルマーケティング施策と高度に組み合わせることによる効果向上や、自治体通知自体のデジタル化による効率化など、新しい時代の住民コミュニケーションのあり方も積極的に模索しています。

2.インサイトに基づくセグメンテーションとメッセージ開発

自治体通知がその媒体としての実力をいかんなく発揮するためには、当然ながら通知物の内容、つまりメッセージが重要になります。キャンサースキャンのマーケターたちが、そのメッセージ開発の時に最も重視しているのがコミュニケーション対象者のインサイトです。

マーケターがインサイトという言葉を使う時、それは直訳的な「洞察」という意味ではなく、「消費者の行動を作り出している(本人も気付いていないような)動機や背景、きっかけや思い込み」のような意味で使われます。

対象者のインサイトを肌感覚として理解することで、どんなことが行動変容を妨げるフリクションになっているのか、どうすればそのフリクションは取り除かれるのかが丁寧に理解できるようになります。キャンサースキャンでは、定性的調査や定量的調査、行動科学のエビデンス探索を通して対象者のインサイトを突き詰めることから始め、インサイトの異なる対象者毎にセグメンテーションを行います。そして、各セグメントのインサイトに基づいてフリクションを取り除くためのメッセージを作り込みながら、効果的な自治体通知を開発しています。

3.ヘルスデータ x 機械学習による超高精度なコミュニケーションプランニング

キャンサースキャンでは、市区町村が保有する住民のヘルスデータ(健診結果や医療記録)を専門の公衆衛生チームとデータサイエンスチームが作り込んだ機械学習アルゴリズムを用いて解析し、その解析結果をマーケティング戦略立案のための重要な要素に位置づけています。

例えば、特許を取得した機械学習アルゴリズムを用いて、それぞれの住民が今年健康診断に来る確率や、それぞれの住民にとって最もコミュニケーション効果の高い日時を高精度に予想し、ターゲット選定やコミュニケーションタイミングの決定に生かしています。自治体通知をコミュニケーション媒体に設定しているために、こうした住民一人一人のヘルスデータの高度な解析結果を、各個人のコミュニケーションの内容に反映することができるため、自分事化された効果の高いコミュニケーションを送ることができるのも、私たちの大きな強みです。

こうした最新のデータ解析技術と予防医療の知識を組み合わせることで初めて実現する、超高精度なコミュニケーションプランニングと、狙いを定めた対象者に確実にコミュニケーションが届く自治体通知との組み合わせが、キャンサースキャンのマーケティングを支えています。

4. ナッジ理論の活用

キャンサースキャンは、リチャード・セイラー教授が2017年にノーベル経済学賞を受賞するきっかけとなった行動経済学の「ナッジ理論」を、日本の予防医療事業に取り入れた先駆者としても高く評価されています。2018年には、私たちの大腸がん検診受診率向上キャンペーンが、環境省と行動経済学会が共催するコンテストにおいてベストナッジ賞を受賞しました。また同年、厚生労働省からの依頼で同省が全国の市区町村に配布するためのナッジ理論を活用した『受診率向上施策ハンドブック』も制作し、ナッジ理論の予防医療分野への実践的な応用を推進しています。